こんな人に刺さる
- 出張先のホテルで隣の部屋の物音が妙に気になった夜を知っている人
- 嫌いな相手との距離が縮まる瞬間の、逃げ場のない緊張を知っている人
- 黒ストッキングのラインが脳の奥に残ってしまう人
この前さ、出張帰りの新幹線で、隣に座った女性社員がいたんだ。
スーツのジャケットを膝に畳んで、白シャツ一枚になって。黒いストッキングの足を少し組んで、窓の外を見てた。出張帰り特有のくたびれ方ってあるじゃないか。化粧が少し落ちて、髪が緩んで、でも仕事の顔がまだ半分ある、あのアンバランスな状態。
俺はずっと車窓のふりをしながら、ちらちら見てた。完全に変態である。でも見るだろ。
思ったのは——この人にも、こういう出張の夜があるんだな、ということ。ホテルの部屋に一人で戻って、ユニットバスにお湯を張って、あのストッキングを脱いで。他人が絶対に見ない時間が、この人にも毎日ある。
お前にも、そういう想像をした相手が一人くらいいるだろ。
職場で接点はあるけど、別にそんな仲じゃない女性。出張が被ったりしたら、移動中の新幹線の車内温度とか、ホテルロビーで鉢合わせたときの距離感とか、変に意識しちゃうやつ。
この作品はそれを、もっとねじった形で持ってくる。
嫌いな上司。セクハラ野郎。弱みまで握られてる。相部屋。
——普通に最悪なシチュエーションなのに、なぜか俺たちの視線が止まる。
出張シャツの、あのよれ具合。長時間の移動で少しだけ崩れた白シャツが、ホテルの間接照明に照らされる感じ。黒ストッキングの、足首から膝にかけてのライン。シングルベッドが二つ並ぶ狭い部屋の、消せない体温と、クーラーの白い音だけが響く静けさ。匂いが混ざり始める距離。
そこまで想像できる。でも現実じゃそこで止まる。
この作品、それを心ゆくまでやっていいやつなんだ。
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出張シャツと黒ストッキングのライン。相部屋の空気がにじんでくる。
新ありなは、こういう「嫌いなのに」の感情の濁りを演じるのがうまい。
セクハラ上司に弱みを握られた女性の、反抗できない怒りと、逃げられない焦りと、じわじわ崩れていく感情の境界線。あの顔に浮かぶ複雑さは、ただの官能じゃなくてもっとグロテスクで、だから目が離せなくなる。
着衣フェチとして言わせてもらうと、出張帰りの白シャツが少しずつほつれていく過程と、黒ストッキングが持つ「まだ外の自分でいる」という防御ラインの意味がある。あの服が持つ文脈ごと、作品の空気に飲み込まれていく感覚。
俺たちが見たいのは裸じゃなくて、その手前の、崩れていく一瞬だ——と思っている。
出張シャツの崩れ方とストッキングのライン、この一枚で文脈が全部わかる。